Research

地域環境科学プログラム担当教員の研究内容についてご紹介します。

自然・基礎科学分野

環境科学分野

土木・防災・都市計画分野


自然・基礎科学分野


芝原 雅彦(教授)

研究分野:構造有機化学
キーワード:シクロファン,色素増感光触媒,分子ワイヤー

①多層[3.3]シクロファンに関する研究
二つの芳香環をメチレン鎖等で架橋したシクロファンは渡環π電子相互作用を調べる観点から広く研究され,多くの興味深い化学的または物理的性質が期待されます。我々はこれまでに,4層までの多層[3.3]パラシクロファン(PCP)および6層までの多層[3.3]メタシクロファン(MCP)の合成に成功し,芳香環が積層した際に生じる,空間・結合両経由による渡環π電子相互作用についての研究を行い,いずれの多層シクロファン(CP)においても多層化にともない強い電子ドナー性があることを明らかにしました。現在,系統的な渡環π電子相互作用の解明に向けさらなる多層化を行っています。

②多層[3.3]シクロファンの機能化に関する研究
3層および4層CPにおいてはラジカルカチオン種の顕著な非局在化が観測され,多層化にともない電荷共鳴帯の長波長シフトを観測しました。これは,多層シクロファンが電荷分離状態に寄与することを示しており,これらを組込んだ分子ワイヤーおよび色素増感光触媒への展開を目的として研究を行っています。


泉 好弘(准教授)

研究分野:植物形態学
キーワード:葉緑体分裂,植物,藻類

①ペプチドグリカンの合成阻害剤の葉緑体分裂に及ぼす影響
シアノバクテリアの細胞壁の主成分であるペプチドグリカンは,灰色藻類を除く真核生物の葉緑体には存在しないと考えられてきた。しかしながら,近年の研究でペプチドグリカンの合成阻害剤がシダ類,ヒカゲノカズラ類,セン類,接合藻類の葉緑体分裂を阻害することが明らかになった。これらの結果は真核生物にもペプチドグリカンの合成経路が存在し,葉緑体の分裂に関与していることを示唆している(セン類ではペプチドグリカンの存在が証明されている)。私は,プラシノ藻類やクロララクニオン藻類(二次共生藻類)を用いてペプチドグリカンの合成阻害剤が葉緑体分裂に及ぼす影響を調べていきたいと考えている。

②サイトカイニンの葉緑体分裂に及ぼす影響
葉緑体の分裂面にリング状の構造(色素体分裂リング)があることが報告され,葉緑体の分裂は分裂面に生じるリング状の構造が収縮することによって起こるのではないかと考えられるようになった。その後,このリング状構造の周辺に存在するタンパク質に関する研究が行われ,様々なタンパク質が葉緑体分裂の制御に関与していることが明らかになってきた。それらのタンパク質の中でPDVと呼ばれるタンパク質はダイナミン様タンパク質(DRP5B)局在に必要であり,細胞内に野生株よりも小型の葉緑体を多数持つ変異株ではPDVが過剰に発現していることを報告された。これらの結果から,PDVの量が多くなると葉緑体の分裂速度が速くなり,細胞内に小型の葉緑体を多数存在するようなると考えられるようになった。その後の研究で,サイトカイニンがPDVの量を増加させ,葉緑体の分裂速度を早くする働きがあることが明らかになった。これらの研究は被子植物のシロイヌナズナとセン類ヒメツリガネゴケ行われている。私は, コケ植物のタイ類を用いて,サイトカイニンが葉緑体分裂に及ぼす影響を調べていきたいと考えている。


環境科学分野


北西 滋(准教授)

研究分野:保全生物学,分子生態学,生物資源保全学
キーワード:水圏生態系,遺伝的多様性,野生動物,外来種

①水圏生態系の生物多様性に関する研究
水圏(海,湖沼,河川)は,多様な動植物の生息の場となっています。しかし近年,環境破壊や外来種の侵入などにより,水圏生態系の生物多様性の減少や生態系サービスの劣化が懸念されています。本研究室では,フィールド調査やDNA解析などにより,水圏生態系におけるさまざまな動物の基礎生態や遺伝的特性,人間生活の影響などの解明に取り組んでいます。また,得られた知見を生態系保全や環境教育などにつなげていくことも目的しています。

②水産対象種の資源保全・管理に関する研究
近年,さまざまな水産対象種において,その資源量の減少が大きな社会問題となっています。加えて,無秩序な移植放流による在来生態系への影響(遺伝的攪乱や在来遺伝子資源の喪失)も懸念されています。そこで本研究室では,「地域の在来個体群とその遺伝子資源の保全」と「水産資源の増大・持続的利用」とを両立した資源管理手法の確立を目指して,日本各地の在来個体群の生活史特性や遺伝的特性,それらの空間的・時間的差異に関する研究に取り組んでいます。


永野 昌博(准教授)

研究分野:生物学,生態学,生物多様性学
キーワード:生物多様性,レッドデータブック,DNA,サンショウウオ,両生爬虫類,土壌動物,昆虫

大分県の生物多様性の解明と保全
大分県に生息する生物(特に両生爬虫類)の多様性と生息状況を明らかにすることにより,大分県の絶滅危惧種の選定とランク付けを行う。また,それに基づいた絶滅危惧種の保全,野生生物と人間との持続可能な共存システムを考案する。
特に外来生物による生態系の攪乱や在来種の遺伝子汚染の悪影響の低減・防止を目的とした,遺伝子雑種判別技術の開発やその技術を用いた応用的研究を実施している。また,希少な絶滅危惧種(流水性サンショウウオ)を探索するために環境DNAの用いた調査法の開発を進めている。
また, 2022年に大分県大分県宇佐市・豊後高田市において新種のサンショウウオ(ニホウサンショウウオ Hynobius nihouensis)を記載し,他にも山口県,広島県,島根県,高知県,愛知県において新種のサンショウウオを記載するなどの分類と生物多様性に関する研究も行っている。


西垣 肇(准教授)

研究分野:海洋物理学,気象学
キーワード:海流,海洋力学,微気象

①海流の力学についての研究 黒潮・親潮などの海流について,現象の把握と力学機構の解明を目指しています。観測デー タや数値モデル・数値実験を用い,力学理論を適用して研究を進めています。

②沿岸海洋の流動についての研究 沿岸海洋の海水分布と流動について,その把握と力学機構の解明を目指しています。観測と数値モデル・数値実験を用い,力学理論を適用して研究を進めています。

③地域の微気象の調査 大分県内の各地において,気温・降水量などの現地観測を行って,地域の気象と特有の微気象を調べています。


■土木・防災・都市計画分野


小林祐司(教授)

研究分野:都市計画,地域計画,都市防災,地域防災,防災・減災教育
キーワード:都市計画,都市防災,防災・減災教育,地理情報システム(GIS)

①地理情報システム(GIS)を活用した地域の災害 リスク分析や空間構造の分析・評価
多様化・激甚化する自然災害への対応を強化するために,災害リスクと避難可能性,被災想定の評価・分析,将来人口推計などを通じて,将来の都市・地域構造のあり方について提案を行っています。

②事前復興推進のための調査分析と地域連携活動
災害発生後のまちの再興が課題となっています。災害,被災を想定しながら次のまちづくりをどのように進めていくのかなど,被災後のビジョンを共有しながら,効率的・効果的な復旧・復興を進めていく必要があり,事前復興の役割は大きいと考えられます。そこで,自治体・企業と連携し,大分県域における事前復興推進のための調査・分析,意識啓発を実施しています。

③防災・減災教育と活動の支援
防災・減災意識の社会実装を目指し,学校や地域における防災まち歩きやワークショップなどの活動を実施しています。このなかでは,LEGOなどを活用し,子ども達が興味を持って防災・減災に 取り組むことができるような工夫も行っています。